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社寺の健康診断/中外日報新聞
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2.建物にも健康診断を

五、(最終回)病気の早期発見と治療 人間と同じ事 社寺を長生きさせる秘訣

語りかけてくる建物

ご住職様より「うちの本堂を視てくれ」と言われ、地図を頼りに訪ねて行った。山間の曲がりくねった道を走り、石段を登り詰めると、そこには樹齢数百年はあろうと思われる楠の大木に囲まれた瀟洒な本堂が堂々と建っていた。
その参道を進むにつれて、建物はいろいろな症状を私に訴えてくる。数年前の台風で軒を支える腕木が骨折してしまい、建物が大きくうなだれてしまった。しかもそこから雨漏れがおき、さらに病状が悪化している。
本堂が建立されたのは三百年位前で、腕の良い頑固一徹、職人気質の棟梁のもとで建てられた感がうかがえた。棟梁の年齢は五十歳前後であろうか、建物に自信と勢いが感じ取られる。今までに幾度かの改修の手が入れられているが、残念なことに最後に施工した者が、宮大工でなかったのが今回の痛みの原因と推察できる。
建物はしっかりとした岩盤の上に建っているが、周りを囲む樹々も大きくなり、脚元に陽が当たらずに、今は「水虫」に悩んでいる。樋の掃除を誰もしてくれないのも、もう一つの悩みである。
七百項目のチェックリストで精査
建物は、初対面の私にいろいろな事を語りかけてくる。まるで、私の来訪を以前より知っていて、待ちわびたように相談してくる。
私はご住職との間に立って、建物の訴えを代弁するのだが、声無きメッセージをうまく伝えることができず、過去に悔しい思いを幾度もしてきた。

そこで建築家なら、 その気持を文章ではなく数値であらわそうとしたのが「社寺建築の調査・健康診断」である。七百項目のチェックリストを中心に精査し、柱の傾き、歪みを数値で表わし、客観的に分かりやすく解説して診断書を作り、ご住職様、檀家様にご理解いただくように努めた。

社寺の健康診断/中外日報新聞

おかげさまで、診させていただいた建物とのご縁を結んでいただく事が多くなった。

神仏を無言のまま、じっと守り続けている社寺に、数年に一度「ご苦労様」と声をかけ、人と同じように健康診断を受けさせていただきたい。
今ある状態を正確に把握し病気の早期発見・治療に努めることが、社寺を健康で長生きさせる秘訣であり、末永く付き合っていく方法だと思う。そして御用材として使われた木材を有効に使い、社寺が本来持っている寿命を全うできるように、微力ながら私にお手伝いができればと思っている。
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今回で「社寺建築の健康診断」の連載も終わりとなりますが、皆様に稚拙な文章でご迷惑をおかけ致しましたこと、深くお詫び申し上げます。また、ご不明の点・気になることがございましたら、当方まで遠慮なくお尋ねください。

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