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社寺の健康診断/中外日報新聞
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2.建物にも健康診断を

二、建物にも「健康診断」を 
問われる大工の技量と心
前回、建物は生き物で人と同じように専門職による健康診断を受け、その状態を性格に把握することをおすすめした。しかし、医者に診てもらうどころか、素人判断で風邪ひき程度と決めつけたため、致命傷となることも多々ある。
以前、「瓦の葺き替えだけですけど」と連絡があり、「一度、見させて下さい」とお願いすると、「築二十年でしっかりしているので遠路来ていただかなくても結構です」と言われた。しかし、素人判断では禍根を残すと思い、お願いして見せていただくと、長年の雨漏れで、軒は波打ち隅木は下がり、惨憺たる状況であった。聞けば、三度目の瓦の修復という。
そこで、ご住職様に建物の「定期健康診断」の必要性をお話しし、屋根裏を見せていただいたところ、外観もさることながら、これなら傷むのも無理なかろうと思われる構造だった。極端に部材を節約し、軒を支える木材(桔木・はねぎ)の本数は通常の半分で、おまけに径も極端に小さかったからである。
一番問題なのは、瓦の下地となる野地板(屋根瓦を乗せる下地板)の厚みである。普通は、五分(十五ミリ)以上とるのだが、三分(九ミリ)板が使ってあった。野地の板厚はそのまま釘の引き抜き耐力に比例するので、どんなに良い瓦を葺いても、釘が効いていないから瓦がずれてしまう。二十年に三度の補修というのもうなずけるものであった。
ここでいくつかの問題点がある。その一つは大工の技量と心である。社寺の仕事をする者は、後世のために数百年以上耐え得る建て方を習得し、努力研鑽しなくてはならない。

社寺の健康診断/中外日報新聞

十万円惜しみ、損失数千万

何よりも大事なのは、皆さまから預かった浄財を有効に使い、価値を高めて立派な堂宮として、戻さなくてはならないということである。
野地板の五分と三分の木材の差額は十万円程度。大工の貼手間はいっしょだから、結果として、この大工が惜しんだ板代のために、施主は数千万円のお金を使う羽目になったのである。また瓦葺業者も、本職であるのなら、施主にしかるべき助言があって良かったと思われる。
ご住職や宮司様方に、社寺建築の工法まで覚えて下さいとは言わない。しかし、神仏を風雨から守り続けている建物に、数年に一度、「ご苦労様です」と声を掛け、「体調はいかが」と尋ねてみてはどうであろうか。専門職による健康診断を受け、「病気」の早期発見、治癒に努める。それが建物を健康で長生きさせる秘訣であり、無駄なお金をかけずに社寺を守る方法だと思う。

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